森の人 Forest People
『森の人 Forest People』 | ||||
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土屋昌巳 の スタジオ・アルバム | ||||
リリース | ||||
録音 |
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ジャンル | ||||
時間 | ||||
レーベル | ポリドールK.K./クロス | |||
プロデュース | 土屋昌巳 | |||
土屋昌巳 アルバム 年表 | ||||
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EANコード | ||||
EAN 4988005219442 |
『森の人 Forest People』(もりのひと フォレスト・ピープル)は、日本のシンガーソングライターである土屋昌巳の7枚目のオリジナル・アルバム。
1998年10月21日にポリドールK.K.のクロスレーベルからリリースされた。前作『Mod' Fish』(1997年)よりおよそ1年振り、フルアルバムとしては『TIME PASSENGER』(1989年)以来およそ9年ぶりとなる作品であり、作詞および作曲は土屋が手掛けているが、一部楽曲の作詞はBUCK-TICKの櫻井敦司が手掛けている。
レコーディングには櫻井がゲストボーカルとして参加したほか、元ジャパン所属のミック・カーン、さらにジョン・ギブリンやリチャード・バルビエリ、セオ・トラヴィスなどの著名なミュージシャンが参加している。
録音、制作[編集]
本作の半分程度はロンドンにある土屋の自宅にてレコーディングされている[1]。トラックダウンはフランス人であるドミニク・ブレスの所有するプライベート・スタジオで行なわれたことや、初期のPro Toolsを使用してかなりパーソナルな環境下で制作が行われたと土屋は述べている[1]。本作で使用されたSEはライブラリーを使用しておらず、すべて土屋自身が直接録音したものが使用されている[1]。また、土屋は5枚目のアルバム『TIME PASSENGER』(1989年)にて使用されたエジプト風の声もエジプトで自身が録音したものであると述べた上で、それまでスティーヴ・ナイやセッション・メンバーが行っていたことをすべて一人で行わなければならない状況で非常に大変であったと述べている[2]。
当時の音楽を取り巻く状況として、1980年代終盤にはヒップホップやリズム・アンド・ブルースによるリズム革命は一度終焉を迎えたと思われていたが、1990年代に入り突如ロンドンからドラムンベースや2ステップなどの新しいジャンルが勃興したことにも本作は多大な影響を受けており、土屋は特にトリップ・ホップに強いこだわりを持っていたと述べている[2]。土屋は通常のレベルでは気づかれないであろう部分まで音作りに固執しており、スネアドラムの音色もドラムスティックが接触するタイミングまで微調整していたと述べている[2]。
音楽性、コンセプト[編集]
前作『Mod' Fish』(1997年)リリース後、突如「森」のことが気になり始めた土屋は「森の音楽」の制作欲求が高まり、1997年11月頃から本作のための断片的な音作りを始めた[3]。当初は抽象的な「森の音」を制作していたが、徐々に「森のうた」を制作する欲求が高まっていき、最初に制作されたのが「小さな森の人」となった[3]。同曲のデモテープを制作し数回聴いている内に前年に会ったBUCK-TICK所属の櫻井敦司のことを思い出し、櫻井に作詞とボーカルを強引に依頼する形となった[3]。土屋はADATのテープに「真夏の夜の森」および「小さな森の人」の2曲のラフなミックスを収録して櫻井に送付し、「テーマは森です」とだけ伝えた[3]。土屋と櫻井とのセッションは東京とロンドンの往復書簡でのみ行われ、デモテープには土屋による仮歌は入っていたものの、ボーカル・アレンジメントは櫻井に一任された[2]。櫻井は収録可能な8トラックすべてにおいて異なる歌唱法でレコーディングしていたが、試し録りとしてレコーディングされた最もシンプルな歌唱法のトラックを土屋は本作に収録することとなった[2]。櫻井によって制作された歌詞およびボーカルに対して、土屋は「結果は本作の中で一番素晴らしい仕上がりの曲になりました」と述べて絶賛している[3]。
土屋は「森」に関して以下のコメントを記している。
森の中に入り大きな木の下に静かに座って目をつぶっていると、自分が何か大きな力に包まれ守られているとても安心した気持ちになれます。そして自分の存在がとても小さく、しかも森の一部に変化して行くのが解ります。だんだんと日が沈む頃には森の中の小さな動物達や妖怪達、そして美しい妖精の気配が感じられます。そして夜になると森はとても怖いです。
土屋は地球がかつては宇宙のための森であったと主張し、地球人が公園や近所の森に散歩をするのと同様に、今日においても他の惑星の住人が地球を訪れていると述べている[3]。土屋は遠い昔の地球が綺麗な森であった頃にはより多くの他の惑星の住人が訪れていたのではないかと推測し、また地球から森が消失すれば人類も存在できず、宇宙のバランスが崩れてしまうと主張している[3]。土屋は本作を通じて地球人がより「森」について熟慮するよう希望するというメッセージをライナーノーツに記している[3]。本作にコンセプチュアル・プロデューサーとして参加しているLUNA SEAのSUGIZOは、本作に同封されたカードにおいて「本当にこのアルバムこそ一人でも多くの人に触れて欲しい。この音こそ真の説得力と、痛いほどの“気”と、今最も必要な言葉達と、少年の心を合せ持った作品だと思うから」と記している[4]。
批評[編集]
専門評論家によるレビュー | |
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レビュー・スコア | |
出典 | 評価 |
CDジャーナル | 肯定的[5] |
音楽情報サイト『CDジャーナル』では、本作が土屋の9年ぶりとなるフルアルバムであることに触れた上で、「静かななかに“おじさんを甘く見るなよ”という気迫のこもった佳作」「エコロジカルなテーマはあるにはあるが、そのへんの臭みはないので大丈夫」として肯定的に評価した[5]。
収録曲[編集]
全作詞・作曲・編曲: 土屋昌巳(特記除く)。 | |||
# | タイトル | 備考 | 時間 |
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1. | 「森のプレリュード」(Prelude) | インストゥルメンタル | |
2. | 「真夏の夜の森」(A Mid Summer Night's Forest) | 作詞: 櫻井敦司 | |
3. | 「森の天使」(Forest Angel) | ||
4. | 「雨の森の人」(Rain Forest People) | ||
5. | 「ガラスの森」(Glass Forest) | インストゥルメンタル | |
6. | 「南の森の出来事」(In a Tropical Forest) | ||
7. | 「ボジョレー氏の森」(Mr.Beaujolais Forest) | インストゥルメンタル | |
8. | 「黒い森」(Night Creatures In Black Forest) | インストゥルメンタル | |
9. | 「森になる日」(The Day I Become The Forest) | ||
10. | 「小さな森の人」(Goblin Forest) | 作詞: 櫻井敦司 | |
11. | 「ローズマリーの森」(Rosemary) | ストリングス・アレンジ: 清水三恵子 | |
12. | 「森の妖精のメッセージ」(A Fairie's Message) | ||
合計時間: |
スタッフ・クレジット[編集]
参加ミュージシャン[編集]
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スタッフ[編集]
- 土屋昌巳 - 全トラック・プロデュース、レコーディング・エンジニア、ミキシング・エンジニア
- ドミニク・ブレス - レコーディング・エンジニア、ミキシング・エンジニア、Pro Tools24
- ダミアン・テイラー - アシスタント・エンジニア、Pro Tools24
- ティム・ヤング(メトロポリス・マスタリング) - マスタリング・エンジニア
- 前田利博(ポリドールK.K.) - A&Rディレクター
- マーティン・ナガノ (Mail Inc.) - A&Rディレクター
- 村木敬史(ポリドールK.K.) - エグゼクティブ・プロデューサー
- 安藤啓介 (Cool Corporation) - アーティスト・マネージメント
- SUGIZO - コンセプチュアル・プロデューサー
- サカグチケンファクトリー - アート・ディレクション
- あおやぎまさき(サカグチケンファクトリー) - グラフィック・デザイン
- アレクシス - イラストレーション
- Kyoko - タイトル漢字
- ニッキー・ケラー (AVGVST) - 写真撮影
- 奥村いずみ(ポリドールK.K.) - ビジュアル・コーディネーター
脚注[編集]
- ^ a b c ESSENCE: THE BEST OF MASAMI TSUCHIYA 2010, p. 10- 「土屋昌巳ロング・インタビュー(後編)」より
- ^ a b c d e ESSENCE: THE BEST OF MASAMI TSUCHIYA 2010, p. 11- 「土屋昌巳ロング・インタビュー(後編)」より
- ^ a b c d e f g h i 土屋昌巳 1998, p. 1- 「アルバム『森の人/Forest People』に寄せて」より
- ^ 土屋昌巳 1998- 同封のカードより
- ^ a b “土屋昌巳 / 森の人 Forest People [廃盤]”. CDジャーナル. 音楽出版社. 2023年1月2日閲覧。
参考文献[編集]
- 土屋昌巳『森の人 Forest People』(CDライナーノーツ)土屋昌巳、ポリドールK.K.、1998年、1頁。POCH-1734。
- 田中雄二『ESSENCE: THE BEST OF MASAMI TSUCHIYA』(CDライナーノーツ)土屋昌巳、ソニー・ミュージックダイレクト、2010年、10 - 11頁。MHCL-1702。