早まった一般化

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早まった一般化(はやまったいっぱんか、Hasty generalization)とは、形式的な誤謬または詭弁の一つ。以下のような論証形式の推論をいう早まった類推類推の危険とも。

AXである。
BXである。
CXである。
DXである。
したがって、いかなる場合もXである。

この形式は論理的に妥当でない。少ない例から一般的な結論を導こうとしており、これが早まった一般化となる。つまり、Xを満たすものが存在するという一部の個別の事実から全体を判断していて、それ以外のEからZまでの中に、Xでないものが存在する可能性が全く考慮に入れられていないため、誤りになる。

具体例[編集]

この論証形式が妥当でないと示すには、真の前提から明らかに偽の結論が導かれる反例を挙げればよい。

富士山は火山である。
浅間山も火山である。
桜島も火山である。
三原山も火山である。
従って、全ての山は火山である。

当然、火山ではない山も存在する[1]

対象となる集合のうち全要素が正しいと証明できる場合は、妥当である。例えば、

ライオンは草食でない。
トラは草食でない。
チーターは草食でない。
ヒョウは草食でない。
…(残り全てのネコ科について言及)
よって、ネコ科に草食の種は存在しない。

という論証は妥当である。

月には動植物は存在しない。
水星も同様である。
金星も同様である。
火星も同様である。
よって、地球以外に動植物が存在する星はない。

という論証は、膨大な天体の数から考えてあまりに示された例が少数であり、太陽系以外の天体について確認の方法がないことから、早まった一般化と言わざるをえない。

数学のように厳密な論証のできる分野では、演繹的に論証することで、あるいは数学的帰納法のような方法を用いて証明することでそれが可能である。しかし、このことはそれが簡単であることを意味するものではない。

脚注[編集]

関連項目[編集]