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上野豊岡藩

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

上野豊岡藩(こうづけとよおかはん)は、上野国碓氷郡豊岡(現在の群馬県高崎市下豊岡町付近)などを領地として、江戸時代初期に存在した。1602年に根津氏(禰津氏)が1万石の大名となったが、1626年に無嗣断絶となった。ただし藩領や藩主の継承など不明な点も多く、廃藩の時期にも異説がある。

歴史[編集]

上野豊岡藩の位置(群馬県内)
前橋
前橋
高崎
高崎
箕輪
箕輪
大戸
大戸
三ノ倉
三ノ倉
豊岡
豊岡
関連地図(群馬県)[注釈 1]

根津氏(禰津氏)は信濃国小県郡出身の氏族で、滋野三家(滋野氏・根津氏・望月氏)の一つとされる[1]根津政直(松鴎軒常安)は武田信玄に従って上野国箕輪城に在城した[1]。武田家滅亡後、政直は甥の根津昌綱に家督を譲るが、隠居後に二男の根津信政が生まれ、徳川家に出仕する[1]

天正18年(1590年)、徳川家康が関東に入部すると、政直は上野国豊岡で5000石を領した[1]。豊岡には東西に中山道が通過し、北西に信州街道(大戸道、草津道[2]、北国往還[2])が分岐する交通の要地である[2]

慶長7年(1602年)、信政は5000石を加増され、1万石の大名となった[1]。これにより上野豊岡藩が立藩する。

信政は同年に没し[1]、息子政次が2代藩主となるが早世[1]、さらに養子となった弟・信直(吉直[3])が家督を継ぐものの、寛永3年(1626年)4月に病死した[4][5]。信直の死は寛永2年(1625年)4月ともされる[3][6]。信直には嗣子がなく、根津家は無嗣断絶となり、上野豊岡藩は廃藩となった[4][5]

歴代藩主[編集]

根津氏

譜代 1万石

  1. 信政(のぶまさ)
  2. 政次(まさつぐ)
  3. 信直(のぶなお)

書籍によっては政次を数えず、信政・信直(吉直)の2代とする[注釈 2]

領地[編集]

角川日本地名大辞典』では、居所や藩領域が不明であるとして、藩の存在自体に疑問があるとしている[4]

下豊岡に所在する常安寺(曹洞宗)は[2]、根津氏の陣屋跡地に所在すると伝えられ[8]、慶長元年(1596年)に根津政直(常安)が開基したとされる[2]。『角川日本地名大辞典』では、根津家が大名に列する以前の領地を信濃国内5000石とし、慶長7年(1602年)に信政が豊岡に封ぜられたとするが[4]、『日本歴史地名大系』では常安寺の存在から、最初に豊岡に入封したのは政直であろうとする[5]

元和2年(1616年)に根津信直が群馬郡三野倉村(現在の高崎市倉渕町三ノ倉)の土地を榛名神社に寄進している[5]。『日本歴史地名大系』は、信政に加増された5000石は三野倉一帯を含む地域であったとみられるとしている[5]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 赤丸は本文内で藩領として言及する土地。青丸はそれ以外。
  2. ^ 『群馬県史 第2巻』(1917年)では根津信政・吉直の2代とする[6]。『角川日本地名大辞典』では根津信政・吉直の2代とする[4]。『日本歴史地名大系』はは藩主として禰津信政・信直のみについて触れる[5]。『藩と城下町の事典』は禰津信政(一説に信成)・吉直のみに触れ、吉直が家督を継いだ時期は不明とする[7]

出典[編集]

  1. ^ a b c d e f g 高崎市立中央図書館(回答). “豊岡藩の禰津(ねづ)氏について所蔵資料から紹介してほしい。”. レファレンス協同データベース. 2024年6月4日閲覧。
  2. ^ a b c d e 下豊岡村(近世)”. 角川日本地名大辞典. 2024年6月4日閲覧。
  3. ^ a b 清田黙 (1891年). “徳川加封録・徳川除封録”. 鴎夢吟社. p. 除2之27. 2024年6月4日閲覧。
  4. ^ a b c d e 豊岡藩(近世)”. 角川日本地名大辞典. 2024年6月4日閲覧。
  5. ^ a b c d e f 『日本歴史地名大系 群馬県の地名』, p. 431, 「豊岡村」.
  6. ^ a b 『群馬県史 第2巻』 1917, p. 18.
  7. ^ 『藩と城下町の事典』, p. 142.
  8. ^ 常安寺について”. 常安寺. 2024年6月4日閲覧。

参考文献[編集]

  • 群馬県教育会 編『群馬県史 第2巻』群馬県教育会、1917年https://dl.ndl.go.jp/pid/1258734/ 
  • 『信州街道』群馬県教育委員会〈群馬県歴史の道調査報告書 5〉、1980年。doi:10.24484/sitereports.101971NCID BN13717251 
  • 『日本歴史地名大系 群馬県の地名』平凡社、1987年。 
  • 二木謙一監修、工藤寛正編『藩と城下町の事典』東京堂出版、2004年。