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ヴィーナスの誕生 (カバネル)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
『ヴィーナスの誕生』
フランス語: La Naissance de Vénus
英語: The Birth of Venus
作者アレクサンドル・カバネル
製作年1863年
種類油彩キャンバス
寸法130 cm × 225 cm (51 in × 89 in)
所蔵オルセー美術館パリ

ヴィーナスの誕生』(ヴィーナスのたんじょう、: La Naissance de Vénus, : The Birth of Venus)は、フランスの画家アレクサンドル・カバネル1863年に描いた絵画[1]

パリオルセー美術館に所蔵されている[2][3]

概要[編集]

本作は、1863年に開催されたサロン・ド・パリに出品されて入選を果たし、芸術の王道であると賞賛され、フランス皇帝ナポレオン3世が個人的なコレクションのために買い上げた[4][2][5][6]。これによって、カバネルは名声を確固たるものにした[7]

本作登場の数年後には、裸体画の製作が非常に流行し、ローレンス・アルマ=タデマハーバート・ジェームズ・ドレイパーフレデリック・レイトンジョージ・フレデリック・ワッツなど後世の画家に大きな影響を与えた[8]

小説家のエミール・ゾラは、本作について、「乳白色の川に身を浸した女神はさながら官能的なロレット[注 1]のようだ。それは肉と骨からできているのではなく――そうであれば淫らになってしまう――、一種の白とピンクの練り菓子でできている」[9]と評価している。

作品[編集]

本作は、ギリシア神話におけるヴィーナスの誕生を下敷きにしている[10]。海水の白濁した泡から生まれたばかりの美と愛の女神、ヴィーナスが描かれている[11][5]

本作完成のおよそ400年前に描かれた、サンドロ・ボッティチェッリヴィーナスの誕生』では、ヴィーナスは貝殻の上に立っているが、本作では海の波の上に横たわっている[11]。はるか遠くの水平線の向こうには、キプロス島が描かれている[11]

ヴィーナスは、憂鬱そうな視線を鑑賞者のほうに向けている[10]。ヴィーナスの髪は、褐色をしており、膝のあたりまで伸びている[4]。ヴィーナスの上では、白色や青色の小さな翼を生やしたクピードーが、ホラガイを吹き鳴らしながら飛び回り、ヴィーナスの誕生を祝福している[4]

脚注[編集]

注釈[編集]

  1. ^ 娼婦の別称[9]

出典[編集]

  1. ^ 『怖い絵 死と乙女篇』 2012, p. 28.
  2. ^ a b 『欲望の美術史』 2013, p. 43.
  3. ^ 高橋愛「ゾラ『ナナ』と絵画における自然主義 : マネとジェルヴェクスを中心に」『Gallia』第51号、大阪大学フランス語フランス文学会、2011年、21-30頁、ISSN 0387-4486NAID 1200052489782021年5月1日閲覧 
  4. ^ a b c 『怖い絵 死と乙女篇』 2012, p. 31.
  5. ^ a b 『日経おとなのOFF』 2018, p. 67.
  6. ^ Alexandre Cabanel - The Birth of Venus”. オルセー美術館. 2019年6月8日閲覧。
  7. ^ オルセー美術館展 印象派の誕生 -描くことの自由-”. インターネットミュージアム. 2019年6月8日閲覧。
  8. ^ 『怖い絵 死と乙女篇』 2012, p. 34.
  9. ^ a b 村田京子「危険な「ヴィーナス」 : ゾラの娼婦像と絵画」『女性学講演会』第19巻第2号、大阪府立大学女性学センター、2016年3月、45-82頁、ISSN 1882-11622021年5月1日閲覧 
  10. ^ a b 井口俊「1863年の「スキャンダル」 : エドゥアール・マネ《草上の昼食》と落選者のサロン」『Résonances : レゾナンス : 東京大学大学院総合文化研究科フランス語系学生論文集』第9号、東京大学教養学部フランス語・イタリア語部会「Résonances」編集委員会、2015年12月、9-17頁、doi:10.15083/00038374ISSN 1348-2262NAID 1200058512732021年5月1日閲覧 
  11. ^ a b c 『怖い絵 死と乙女篇』 2012, p. 30.

参考文献[編集]

  • 『日経おとなのOFF』、日経BP社、2018年7月。