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トヨタ・MR-S

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
トヨタ・MR-S
ZZW30型
概要
製造国 日本の旗 日本神奈川県[1]
販売期間 1999年10月[2] - 2007年9月[3]
設計統括 中川齊[4]
堀重之[5]
デザイン 永津直樹[6]
ボディ
乗車定員 2名
ボディタイプ ロードスター[1]
エンジン位置 ミッドシップ
駆動方式 後輪駆動
プラットフォーム 専用[3][7][8]
パワートレイン
エンジン 1ZZ-FE型 1,794cc 直列4気筒DOHC
最高出力 103kW(140ps)/6400r.p.m.[9]
最大トルク 171N•m(17.4kg•m)/4400r.p.m.[9]
変速機 5速マニュアル・トランスミッション
サスペンション
マクファーソン・ストラット式
マクファーソン・ストラット式
車両寸法
ホイールベース 2,450mm
全長 3,885mm
全幅 1,695mm
全高 1,235mm
車両重量 960kg
その他
累計生産台数 78,041台[10]
各諸元の出典 註記なき項目は、トヨタ自動車株式会社が1999年10月に発表した際の資料[2]より、Bエディションの値を引用した。
系譜
先代 MR2(SW20型)[注 1]
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MR-S(エムアールエス)とは、トヨタ自動車がかつて製造・販売していたオープンカー型の乗用車MR2の後継となるライトウェイトスポーツカーである。製造はセントラル自動車相模原市の旧工場。現在のトヨタ自動車東日本)が担当した。

概要[編集]

既存のヴィッツ基本コンポーネントを流用することで、エンジン出力は控えめながら軽量化による運動性の良さを追求し、運転を楽しめるスポーツカーを目指した。最適な重量配分を得るためにリアトランクを廃[11]し、シート背面にラゲッジスペースを備える。

前輪駆動車のパワーユニットを後方に平行移動する手法で部品などを流用している。トランスアクスルが後輪の直上、エンジンはその前方とかなりリア寄りに置かれ、前後重量配分も後部が重い。車両重量は当初は1,000kgを下回っていたが、強化された衝突安全アセスメントに対応などのため、度重なる年次改良で補強されて最終的に当初よりも40kg程度車両重量が増加している。サスペンションは前後ともストラット式サスペンションである。

車名は、日本国外向けも含めてMR-Sに変更する計画であったが英語圏でMrs.(ミセス)に通じてスポーツカーにそぐわず、日本国外のヨーロッパとオーストラリアはMR2が継続された。米国向けはオープンカーとなったことを明確にするため、MR2スパイダーとなった。日本国内でスパイダーの商標はダイハツ工業が保有している。フランス向けは初代よりMRとして輸出されていた。MR-Sの"MR"はミッドシップMidship Runabout )を指している。

スペシャルティカー市場が縮小して年間生産台数は2006年に1,000台程度となり、2007年7月末に販売終了となった。総生産台数は77,840台で、他社同クラスの小型オープン2シーターモデルと比較して少ない。生産中止前に、ブラックカラーのレッドトップやメッキ風エアインレットガーニッシュなどの特別仕様を設定したFinal versionが1,000台限定で販売された。

国内向け車型は、トヨタマークがステアリングのみ刻印されており、エクステリアは一切なく「MR」を図案化したエンブレムがある。

スタイル・機構[編集]

エンジン[編集]

全車とも、直列4気筒DOHCで排気量1,800cc、最高出力140馬力/6,400rpm、最大トルク17.4kgm/4,400rpmの1ZZ-FEエンジンを搭載する。

トランスミッション[編集]

MTのほか、日本の量産車では初となるシーケンシャルマニュアルトランスミッション (SMT) が設定される。MTは初期型が5速、マイナーチェンジ以降は6速。

型式 ZZW30型(1999年-2007年)[編集]

  • 1995年 - MR-Sの原型となる4人乗りコンセプトカーのMR-Jを発表。
  • 1997年 - MR-Sのコンセプトカーを東京モーターショーで発表。基本スペックは1999年発表の量産モデルとほぼ同一だが、外観デザインの細部が異なる。
  • 1999年10月 - 発売。
  • 2000年8月 - SMTモデルとトップグレードのVエディションを追加。
  • 2002年8月 - マイナーチェンジ。MTを5速から6速に多段化、タイヤサイズをフロント185/55R15・リア205/50R15からフロント185/55R15・リア215/45R16に大径化、フォグランプを追加、ヘッドランプとテールランプの意匠を変更、シート形状を穴あきタイプに変更、ボディおよびサスペンションの剛性を強化、インテリアを変更。
  • 2004年1月 - ボディ剛性の強化により車重が30kgほど増加。
  • 2005年12月 - フォグランプインジケーターを追加し、テールランプとブレーキランプの配置が入れ替わる。
  • 2006年11月 - ベース車の2007年1月限りでの生産終了を発表し、特別仕様車「Vエディション ファイナルバージョン」を1,000台限定で発売。
  • 2007年4月[12] - 生産終了。流通在庫のみの対応となる。
  • 2007年7月[13] - 流通在庫の新車登録を完了し販売終了。1代限りでモデル廃止となり、トヨタにおけるスポーツカーのラインナップは5年後の2012年に登場する86まで途絶えることとなった。

取扱い販売店[編集]

販売[編集]

カセルタ[編集]

株式会社トヨタモデリスタインターナショナルは2000年6月から、MR-Sをベースに株式会社モディによる意匠の外装などに架装したコンプリート・カー「カセルタ」を、全国のネッツトヨタ店などで販売した[14][15][16]。限定150台としたが、販売数はその数に達しなかったという[14]

VM180 TRD[編集]

株式会社トヨタモデリスタインターナショナルは2000年8月から、MR-SをベースにTRDと共同開発したコンプリート・カー「VM180 TRD」を、全国のトヨタビスタ店などで100台限定販売した[17]

VM180 ZAGATO[編集]

株式会社トヨタモデリスタインターナショナルは2001年1月から、MR-Sをベースにザガートによる意匠の外装を架装したコンプリート・カー「VM180 ZAGATO」を、全国のトヨタビスタ店などで100台限定販売した[18][19]

MR-S TTE Turbo tuned by TMG[編集]

株式会社ラックは2006年1月から、Toyota Team Europeが開発したターボチャージャーなどを装着したコンプリート・カー「MR-S TTE Turbo tuned by TMG」を、全国のネッツ店などで販売した[20]。部品でも販売され、合わせて100台分の数量限定だった[21]

モーター・スポーツ[編集]

TRDは、2000年の全日本GT選手権GT300クラスにMR-Sで参戦すべく、アペックスと共同でMR-S GTを開発した[22][23]。初年こそ最終戦の1勝にとどまったが、翌2001年はプライベーターにも採用されたことからMR-Sが全7戦中4勝を占める。遂には、2002年にARTAアペックスMR-Sが年間総合優勝を飾った[22]

カスタム[編集]

  • 株式会社オートバックスセブンは2002年から、JGTCGT300クラスで参戦をサポートしているARTA with A'PEXの31号車の外観を模したコンプリート・カー「モノクラフト GT300」を、スーパーオートバックスなどで販売した[24][25]。部品でも販売され、合わせて100台分の数量限定だった[26]
  • 横浜スタジアムリリーフカーに、2台のMR-S改造車を2002年から2016年まで使用していた[27]。改造は、トヨタテクノクラフト株式会社が手掛けた[27]
  • 製靴業の株式会社マルミツは、新たに立ち上げるブランドのイメージリーダーにカセルタを使おうとも考えたが不満な点も多く株式会社トヨタモデリスタインターナショナルを説得しカセルタの内外装を全面変更したネグローニ・スパイダーを製作させた[15][28]
  • GALLANT ABFLUGは2009年に、MR-Sをベースに製作したコンプリートカーMRXを販売した[29]
  • MR-S ロッテ"BLACK BLACK" - ロッテガムブラックブラック20周年記念のキャンペーンとして1名にプレゼントされた。モデリスタによりボディ・ハンドル・シート・サイドパネルがカスタマイズされた。

余聞[編集]

  • 車名は、Midship Runabout-Sports[注 2]の略としている[2]
  • 1996年発売のポルシェ・ボクスター(986型)との相似点から、日本では「プアマンズ・ボクスター」と呼ばれることがある[31][32]
  • 株式会社オートバックスセブンが販売したコンプリート・カー「モノクラフト GT300」が、テレビ・ドラマ『西部警察 SPECIAL』で劇用車に用いられた[33]
  • 日本国内の新車登録台数の累計は21,039台だった[34]
  • 株式会社GROOVY CATSは、原動機のホンダ・K20A型に載せ替えを請け負うMR-S with VTECを受注していた[35]

外部リンク[編集]

脚註[編集]

註釈[編集]

  1. ^ トヨタ自動車株式会社は日本においては、MR-Sは専用のプラットフォームが採用された新しいライトオープンスポーツであり、生産が中止されたMR2の後継ではないと「主張」していた[3][7]
  2. ^ トヨタ自動車株式会社の資料では、Midship Runabout-Sportsをミッドシップ式の小型車と邦訳している[30]

出典[編集]

  1. ^ a b MR-S”. トヨタ自動車75年史. トヨタ自動車株式会社 (2012年). 2024年6月6日閲覧。
  2. ^ a b c トヨタ、新型オープンスポーツカー「MR-S」を発売』(プレスリリース)トヨタ自動車株式会社、1999年10月12日https://www.toyota.co.jp/jpn/company/history/75years/vehicle_lineage/car/id60000647/news/60000647.pdf2024年6月6日閲覧 
  3. ^ a b c 伊達軍曹 (2020年1月24日). “トヨタ最後のミドシップ!! 先祖を捨てたMR-Sの挑戦と変貌”. クルマ雑誌No.1 『ベストカー』のWEB版. 株式会社講談社ビーシー. 2024年6月6日閲覧。
  4. ^ 藤田耕治 (1999年10月12日). “【トヨタMR-Sプレス発表会速報 Vol.2】シーケンシャルギアボックスはもう少し待て!”. レスポンス. 株式会社アイ・アール・アイコマースアンドテクノロジー. 2004年1月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  5. ^ 堀重之 (2018年2月5日). “走りの感覚”. グランプリ・モーター・ブログ. 株式会社グランプリ出版. 2024年6月6日閲覧。
  6. ^ 高木啓 (1999年10月12日). “【トヨタMR-Sプレス発表会速報 Vol.5】「MR-Sのデザインはショーカーと変わった?」デザイナー永津直樹氏インタビュー”. レスポンス. 株式会社アイ・アール・アイコマースアンドテクノロジー. 2004年2月6日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  7. ^ a b トヨタ、「MR-S」を発売”. WebCG. 株式会社二玄社 (1999年10月14日). 2000年5月16日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  8. ^ トヨタ MR-S”. MOTOR DAYS (1999年11月5日). 2000年3月2日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  9. ^ a b MR-S:カタログ(トヨタビスタ店版)”. Auto Catalog Archive (2000年4月). 2024年6月6日閲覧。
  10. ^ トヨタ自動車東日本株式会社”. トヨタ自動車75年史. トヨタ自動車株式会社 (2012年). 2024年6月6日閲覧。
  11. ^ 『90年代国産車のすべて』三栄書房、34頁参照
  12. ^ MR-S(トヨタ)のカタログ”. リクルート株式会社 (2020年1月9日). 2020年1月9日閲覧。
  13. ^ MR-S”. トヨタ自動車株式会社 (2020年1月9日). 2020年1月9日閲覧。
  14. ^ a b 【あの限定車は凄かった②】ベース車はなに? モデリスタ カセルタ(150台限定/2000年6月20日発表/販売価格350万円〜・当時)”. Webモーターマガジン. 株式会社モーターマガジン社 (2019年7月13日). 2024年6月6日閲覧。
  15. ^ a b 猪狩栄次朗,稲水伸行「株式会社マルミツ:中小靴メーカーのブランド戦略」『赤門マネジメント・レビュー』第3巻第5号、特定非営利活動法人グローバルビジネスリサーチセンター、東京、2004年5月25日、217-242頁、doi:10.14955/amr.030502ISSN 1348-5504全国書誌番号:01003427 
  16. ^ カセルタ特集ページ”. 株式会社モディ. 2001年4月17日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  17. ^ ビスタ店の「あの計画」がついにゴーサイン!!”. auto-ASCII. 株式会社アイ・アール・アイコマースアンドテクノロジー (2000年8月21日). 2003年5月28日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  18. ^ 陶山拓 (2001年1月10日). “【名門の味『VM180ザガート』】カロッツェリアはCADエキスパート”. auto-ASCII. 株式会社アイ・アール・アイコマースアンドテクノロジー. 2003年6月29日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
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  20. ^ 田所孝之 (2005年11月30日). “トヨタMR-STTE Turbo tuned by TMG:試乗レポート”. carview. 株式会社カービュー. 2005年12月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  21. ^ トヨタ MR-S TTEターボ 個人売買情報”. エンスーの杜 (2019年6月17日). 2024年6月6日閲覧。
  22. ^ a b 『ARTAアペックスMR-S(2002年)』新たなるトヨタミッドシップ伝説の始まり【忘れがたき銘車たち】”. autosport web. 株式会社三栄 (2023年5月31日). 2024年6月6日閲覧。
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  24. ^ 高木啓 (2002年1月16日). “【オートサロン2002続報】ARTAそのままにオートバックス/モノクラフト『GT-300』”. レスポンス. 株式会社アイ・アール・アイコマースアンドテクノロジー. 2004年5月11日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  25. ^ LINEUP”. SUPERAUTOBACS CUSTOM&TUNED CAR'S. 株式会社オートバックスセブン. 2002年1月4日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  26. ^ GT-300”. MONOCRAFT. 株式会社オートバックスセブン. 2002年8月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  27. ^ a b MR-S 横浜スタジアムリリーフカー”. しらべる. 2024年6月6日閲覧。
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  29. ^ - MRX COMPLETE CAR -”. Abflug Curve Design. 2024年6月6日閲覧。
  30. ^ MR-Sの車名の由来は何ですか?”. お問い合わせ・よくあるご質問. トヨタ自動車株式会社. 2024年6月6日閲覧。
  31. ^ 青木禎之 (1999年10月21日). “トヨタのロードスター「MR-S」に乗る”. WebCG. 株式会社二玄社. 2000年1月20日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  32. ^ 笹目二朗 (2007年6月22日). “トヨタ MR-S V EDITION FINAL VERSION(MR/2ペダル6MT)【ブリーフテスト】”. webCG. 株式会社二玄社. 2007年10月10日時点のオリジナルよりアーカイブ。2024年6月6日閲覧。
  33. ^ TAKA [@R34skyline4drgt] (2019年5月5日). "MR-SがベースのモノクラフトGT300を除けば". X(旧Twitter)より2024年6月6日閲覧
  34. ^ デアゴスティーニジャパン週刊日本の名車第87号13ページより。
  35. ^ MR-S with VTEC”. HALFWAY. 株式会社GROOVY CATS. 2024年6月6日閲覧。

関連項目[編集]

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